2012年10月28日日曜日

もう15年ほど前になるだろうか、
指を怪我し、しばらくの間、奈良で入院生活を送ったことがある。
朝の散歩が楽しみだった。

人気のない早朝、奈良公園を一巡する。

特に幾度見ても圧倒される興福寺五重の塔と
肩の凝らない浮見堂は毎回のコースに入っていた。

今回の個展会場の四つ辻を南に行くと
春日大社の一の鳥居がある。
そこを過ぎてすぐを左に折れると、浮見堂に出る。
暗い木立の道を抜けて池に出ると、いつも耳元で音がする。
それは澄んだ高い音の時もあれば、重くて通る音の事もある。

大正時代のまったくの人造物なのだが、周りの自然との輪郭が微妙で、
朝靄なぞしていると、透明な衝撃が走る。 
ああ、奈良はいいな。日本はいい。 と
その時ばかりは陶然と国粋主義者になる。

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